マイケル・ポーター

現在は「CSR(企業の社会的責任)」と呼ぶべき第2段階に入っている。
しかし、我々はいま、第3の段階へ移行しようとしている。それは「価値を共有する段階CSV(共有価値の創出)」である。
‐[1947-] 米国の経営学者・ハーバード・ビジネス・スクール教授 マイケル・E・ポーター20115月の言葉‐

時代とともに変化したどり着いたCSV経営 

~企業が収益性を確保しながら社会価値を生み出し、事業活動を通じ社会的価値や企業価値を高めてゆく経営戦略~

                                     船橋修一

時代の流れの変化を読み、新しいことに対するチャレンジ時代とともに柔軟に変化し続ける

 

わが社は創業67年の事務機・ICTソリューションベンダーです。もうひとつの顔としてビジネスホテルを運営しています。元は文具屋であり、時代とともに文具が教材に、そして事務機、いまやインターネットと融合したICTソリューションとなり、WEB作成はおろかネットワーク構築もこなすビジネスへと拡大してきました。

しかしながら、このICTソリューションも近年はハードよりもソフトの時代となり、いまやソフトさえも特殊な領域ではなくなり、運用ノウハウがなければ提案もできない時代となっています。大手ハードウェアメーカーも栄枯盛衰。消えていったソフトウェアメーカーは数知れず、我々のような独立系ソリューションベンダーもこの15年で半減しているのが現実です。

 

そこで当社は、多くの同業者が複雑な、自ら使ったこともないシステムを販売している矛盾を感じ、製造業であるメーカーにR&D(研究開発部門)があることをヒントに、自らが販売・メンテナンスを行っているICT機器や、複合機などのOA機器、家具やネット通販での消耗品購入などを実験・検証するR&D部門をつくろう20年前の1996年にビジネスホテル事業を始めました。流通業の色合いが強かったわが社は、今後サービス業へと転換していく必要性を感じていました。そこで、24時間年中無休のサービス業であるビジネスホテル業を始めたのです。

 

 

組織活性化 "キャリアの自由度" やりたい仕事をやる

 

そのホテル社員は、ソリューション事業部の志願兵ではじめました。昨日まで第一線で営業していた人間が、今日から支配人として買う側にまわることになります。すると腕利きのセールスはなんと手におえないクレーマーへと変貌しました。「九州教具に消耗品を発注してもいつも欠品がある。それに納期連絡もない」なんとホテル事業部からは、通販のアスクルに切り替えるよう要求があったのです。

 

 

自社の強みを最大限に生かした戦略

 

 ホテルマンのプロなるものは一人もおらず、事務機の営業マンが見よう見まねではじめたホテル事業部だったので、当初は大手旅行代理店からもあまり相手にされません。そこで自社の強みを生かし、インターネットとホームページを駆使した空中戦での顧客獲得に切り替え、客室にはiPadを設置しています。また事務機器利用など独自のサービスを展開することで、顧客を獲得することができ、売り上げも伸びました。

 

 

「売り手の常識は買い手の非常識」  決断と実行

 

ホテル事業部はソリューション事業部の仲間でありながら、お客様でもあり、ホテル事業部の無理難題を聴いて、好むと好まざるとにかかわらず大変革を続けてまいりました。

もともと当社は文具屋であったことは先に書いたとおりです。複写機を販売するのは、その後の消耗品売上が欲しいからでした。消耗品は当時売上の50%以上を占める重要商品だったのです。しかし、この消耗品販売がホテル事業部のやり玉にあがりました。そこで顧客の声とわりきり文具の販売をやめ、アスクルのディストレビューターになることを決断しました。当社は文具屋をやめて、この時点でソリューションビジネスで生きていく覚悟を決めました。

さらにホテルから当社のライバルメーカーの複合機を採用したいとの申し入れがありました。そのメーカーでなければ実現できない高度なシステムを導入したいというのです。

「コピー機なんてリコーもゼロックスも対して変わらない」と思っていた「常識」は見事に崩されました。このように、「売り手の常識は買い手の非常識」ということをいやというほど思い知らされました。単一メーカーだけを扱っていてはお客様のお困りごとを解決することはできないことを身に染みて知り、メーカーに頭を下げて他メーカーを導入に踏み切りました。

いまやわが社は一社専売特約店から、ありとあらゆるメーカーを取扱いメンテナンスも行うマルチベンダーとなりました。この頃から利益率が向上し、創業以来最高の売上・利益を毎年のように更新するようになったのです。その後ホテルも順調に数を増やし、現在では長崎市に3件、そして昨年2月長崎県波佐見町に「ホテル・ブリスヴィラ波佐見」をオープンするまでとなりました。

 

 

CSV経営へ

波佐見焼で有名な人口15千人の町からホテル建設の誘致を受けました。しかしながら、金融機関をはじめ多くの人が反対しました。「もともと波佐見町にホテルがないのは成り立たないからだ」「やめた方がいい」ごもっともです。「今の波佐見町では成り立たないが、波佐見町を覚醒させる「まちおこし」を九州教具が率先して行えば可能かもしれない」と考えました。

そこで「しごとと湯とリゾート」という日本にも例のないリゾートビジネスホテル「ホテル・ブリスヴィラ波佐見」をオープンすることとしました。波佐見町はパートナーとしての九州教具の意見を真剣に聴いてくれました。「日本一のICT田舎にしよう!」のスローガンを掲げ、町内にインターネットを無料で開放すべく、波佐見町は全国でも珍しい町内Wi-Fiを導入しました。これはすごいことです。町民とインバウンドのお客様はインターネットが使い放題なのですから。お客様の喜ぶ声はダイレクトにホテルに入り、波佐見町役場と町民にお伝えしています。

外国人のお客様も世界中からやってきます。もともと日本の陶器のルーツでもあり400年の陶芸の歴史をほこる波佐見町です。海外のアーチストやお客様の潜在的感心は高かったのです。

ホテルには、Wi-Fiをはじめ、EV自動車の充電器、日本で最先端のICTインフラを装備しています。「日本一のICT田舎」を宿泊したお客様が体験し、Facebookやトリップアドバイザーなどでお客様自身が発信してくれるのです。

これを実現できたのは・・・当社の本業がICTソリューションベンダーだからにほかなりません。

 

今や波佐見町は2年前よりもインバウンドが10万人も増え、町はまちがいなく覚醒しています。誰も損しない、みんなが潤う、そしてみんながちょっとだけリスクを恐れずチャレンジする。これが、CSV経営Creating Shared Value:共通価値の創造)という仕組みの実践です。CSR経営(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)はみなさんご存じでしょう。博愛主義的に社会に利益を還元することで、社会的責任を果たしたと考える人たちがいます。しかし、いまやそれではなりたたないのです。いまは「ともに豊かになる文化の時代」なのです。それをいかに理論から実践に移すかが問われているのです。



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