ウィンストン・チャーチル

私はスターリンに向かって切り出した。

「我々のバルカン問題を片づけましょう。ソ連の軍隊はすでにルーマニアとブルガリアに入っている。

一方イギリスもバルカン諸国に利害関係を持っている。

我々がぶつかり合うことは避けましょう。

そこで提案しますが、ルーマニアはソ連の優先権90パーセント、一方ギリシアはイギリスの優先権90パーセントとしたならば、あなたの意見はいかがですか。」

私は紙に書き留めてスターリンの前に押しやった。

しばしの時間が過ぎた。スターリンは青い鉛筆をとると、承認というように、そこに一本の太い線を引いて、返してよこした。
-[1874-1965] 英国の元首相 サー・ウィンストン・レオナルド・スペンサー=チャーチル『回顧録』より‐

これはチャーチルとスターリンのヤルタ会談でのやりとりです。

このヤルタ会談で第二次大戦の戦後処理がチャーチル、ルーズベルト、スターリンというたった3人の指導者で決められるというところがすごい。

ポーランドの領土、バルカン半島、日本へのソ連参戦などが現地で戦争をやってる人々とは無関係にこのヤクザの親分のような大ボスが決めていく。

不条理ですなあ・・。

そしてこの後、ソ連スターリンの裏切り行為がエスカレートし、戦後ソ連という巨大な悪魔が台頭するんだね。

つい最近のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争や、コソボまでひきずった歴史の大転換は、紙の上に手書きで書いた走り書きと、青鉛筆で返事したこの二人のやりとりで決まったんだ。

この紙切れにどれだけ多くの血が流されたんだろう。

こういう目でこの『回顧録』を読むと、チャーチルがいかに歴史をつくっているのはこの自分だという信念のもとに政治を行っていることを感じる。

今の日本の政治家と首相に読ませたいと思うぞ。

日本はまちがいなく世界に影響を与える大国だ。

その船長はあまりに凡庸で心もとない。それが恐ろしい。

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